近年注目されている非認知能力。非認知能力は、学力やIQなどのように数値化できる認知能力とは違い、目に見えない・数値化しにくい能力のことで、心や自己に関する内面的スキルのことです。
分かりやすいものでは、「最後までやり遂げる力」「発想力」「思いやり」などがこの内面的スキルにあたります。
さらに、この非認知能力を伸ばすためには6歳までの教育が重要といわれており、2020年以降の教育の柱となりました。
本文では、子供の将来を左右するとても大切な能力、非認知能力についての詳しい解説やその能力を高める習い事などをご紹介します。
目次
非認知能力とは?
人間の能力は、大きく分けると「認知能力」と「非認知能力」の2種類があります。
認知能力 | IQやテストの点数など数値化できる能力 |
非認知能力 | 意欲や自制心、思いやりなど目に見えない能力 |
認知能力とは、IQや偏差値、学校のテストなどの数値で測れる能力のことです。学校の成績に大きく影響するのがこの認知能力ですね。
一方、非認知認知能力とは、目に見えない・数値化しにくい能力のことで、心や自己に関する内面的スキルのことです。
今までは、認知能力の方が重視されてきましたが、最近の研究では、非認知能力の方が将来の成功に繋がるということが明らかになってきました。
ではここで、もう少し詳しく認知能力と非認知能力の違いをみていきましょう!
認知能力と非認知能力の違い
認知能力とは、IQや偏差値、学校のテストなどの数値化できる能力のことです。テストを受ければ点数や偏差値がでますよね。これが、目に見えて数値化されている認知能力ということになります。
一方の非認知能力とは、目に見えない力。注目されるようになったきっかけは、ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授らが実施した「ペリー就学前プログラム」です。
このプログラムで、子供の将来の成功に影響しているとされた能力は、認知能力ではなく、意欲や自制心などの非認知能力であったことが証明されています。
その非認知能力は、好奇心や創造力、自尊心や忍耐力など大きく分けると8種類になるといわれています。
非認知能力には8つの種類がある
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目に見えない、数値化しにくい非認知能力には大きく分けると8つの種類に分かれます。
種類 | 能力 |
---|---|
自己肯定感 | 自信 |
意欲 | 集中力・行動力 |
やり抜く力 | 粘り強さ・忍耐力 |
セルフコントロール | 自制心・感情をコントロールする力 |
メタ認知 | 客観的思考力・判断力 |
社会的能力 | リーダーシップ・コミュニケーション力 |
回復力と対処能力 | 失敗から立ち直る力 |
クリエイティビティ | 創造力・発想力・工夫する力 |
一つずつ解説していきます。
①自己肯定感
自己肯定感は、非認知能力の土台ともなる重要な力。幼少期は、「自分は自分のままでいい」と感じる機会が大人よりも少ないため、自ら自己肯定感を育むことができません。
ですが、幼少期は競争や比較の機会が少ないこともあり、子供の自己肯定感を高める絶好のチャンス!だからこそ、幼少期に自己肯定感を育み、自分に自信を持てるように導きましょう。
自己肯定感が育つことで、結果を気にせず物事にトライすることができるようになったり、自分の気持ちや感じたことを素直に伝えることができるようになります。焦らずにスモールステップで成功体験を積み重ねていくことが大切ですね。
②意欲
意欲とは、積極的に行おうとする意志のことです。子供が、好きなものや興味のあるものに夢中になる力や、自分の意思で行動する力は非認知能力の一つです。
本来、子供というのは何事においても経験が少ないです。だからこそ、自分が「やる!」「やりたい!」と思ったら、頭の中は想像力に溢れ、知りたくて仕方のない状態になっていきます。
それらの取り組みは、上手くいくときもあれば失敗するときもあることでしょう。ですが、大切なのは意欲を持って取り組んだことです。
トライアンドエラーをたくさん経験することで経験値が上がり、大人になっても役に立つ力となるはずです。
③やり抜く力
やり抜く力はグリット(GRIT)と呼ばれ、将来の成功を掴むためには必要な能力といわれています。
Guts(度胸) | 困難なことに立ち向かう能力 |
Resilience(復元力) | 失敗しても諦めずに続ける力 |
Initiative(自発性) | 自分で目標を見つける力 |
Tenacity(執念) | 最後までやり遂げる力 |
グリット最大の利点は、生まれ持った才能ではなく後天的に伸ばすことが可能な能力という点。
だからこそ、他人の成功が才能だと決めつけず、「自分にもできる」「出来なくても諦めないことが大切」という思考にすることが大事です。「成功は小さな努力の積み重ね」です。
④セルフコントロール
セルフコントロール(自己制御)とは、自分の行動や思考を調整する力。
セルフコントロールができる子は、落ち着きがある、我慢できる、思い通りにならなくても泣き叫ばない、など感情のコントロールができます。
これは、先天的なものもあります。ですが、脳の前頭前野などによる「実行機能」に関連していることから、教育や環境など後天的な影響によっても伸ばすことができると言われています。
「三つ子の魂百まで」と言われるように、幼少期からのセルフコントロール力は、その後も引き継がれやすく、この能力が高いほど、成人後の社会的地位は高くなるというデータもあるそうです。
⑤メタ認知
メタ認知とは、現在自分はどの段階にあって、目標のために何をしなければならないかなど、自分の状況やスキルを客観的に把握することです。
富裕層に多いのが、このメタ認知能力の高い人。メタ認知が高い人は、自分と他人との適切な距離感が判断できるため、円滑な人間関係を形成することができます。
また、自分自身を客観的に見つめ、感情をコントロールできるため、突発的なトラブルなども冷静に対応できる力があります。
幼少期よりメタ認知を鍛えることで、物事に一喜一憂することなく、特に影響したのはどのような点なのかを分析し、次に生かすことができるようになるでしょう。
⑥社会的能力
社会的能力とは、コミュニケーション能力やリーダーシップ、協調性、思いやりなどのことをさします。これらは、子ども時代だけでなく、社会に出てからも重要なスキル!
「言いたいことを伝える」「人の話を聞く」さらに、「相手の話を理解した上で自分の意見を伝える」などは、幼少期に友だちとたくさん一緒に学び、遊ぶことで身につけていく能力です。
また、学生時代にリーダーシップを発揮した経験がある人は、管理職に就く確率が上がったり、その後の賃金の上昇率が高いともいわれています。
さらに、幼少期に社会能力を伸ばすことで、変化する時代に対応できる力も養われることでしょう。
⑦回復力と対処能力
回復力はレジリエンスとも呼ばれ、③やり抜く力(グリット)と同じようにこれまで見過ごされてきた能力のひとつ。
たとえIQやテストの点数が高くても、「回復力」や「やり抜く力」が育っていないと、失敗や困難にぶつかった時、すぐに心が折れてしまいます。
だからこそ、回復力を育てましょう。それには、失敗すること、その失敗から立ち上がる経験を重ねることが一番です。
また、回復力と同じように重要なのが対処能力。
あらゆる出来事にも対応できる力、状況に応じて対処する力も生きていく上で大切です。これらの能力は、学校生活や習い事など、さまざまな分野から得ることができます。
⑧クリエイティビティ
クリエイティビティとは、新しいものをつくりだす創造力や発想力のことで、突然身につく力ではありません。
だからこそ、幼少期に育むことが重要で、遊びの環境を整えることで身につきやすいといわれています。
また、自ら新しいものを生み出す創造力や発想力はもちろん、遊びの中で、物事に熱中・没頭して取り組む力も養われます。創造力は、3番目に必要なビジネススキルともいわれており、機械にはない人間特有のスキル。
将来、自らの仕事の選択肢を増やしたり、新しい仕事を生み出す可能性にも繋がる重要な力ですので、幼少期よりコツコツと経験を積み重ねていきましょう。
なぜ非認知能力が大切なのか?
非認知能力は認知能力(学力)の土台にもなるといわれている重要な能力。非認知能力が高いと、成長するにつれて学力や進学率、就職率や年収、マイホーム購入率などが高まるとされています。
非認知能力は一昼夜で育つものではありません。大人になってから伸ばすことも可能ですが、非認知能力の土台は3歳までに作られるといわれていますので、幼少期に伸ばすことをオススメします。
また、非認知能力を幼少期に身につけることで、長期にわたり人生に良い影響を与えるともいわれており、文部科学省も重要視しています。
非認知能力が幼少期に育ちやすい2つの理由
非認知能力は特に幼少期に伸ばすと良いといわれていますが、それには2つの理由があります。
1.あらゆることを吸収する力が高い
2.アクティビティを取り入れやすい
それぞれ詳しく解説していきます。
①あらゆることを吸収する力が高い
人の土台が作られる幼少期は、脳が発達段階にあり非認知能力が育みやすいと言われています。特に、12歳までの子どもの脳は、入ってきた情報を受け取る力が大人の数倍あるとされ、インプットする時期としては最適!
だからこそ、インプットをたくさんしてあげましょう。インプットが充実していないと、アウトプットの時期に「出せるものが出せない」「考えるための材料がない」という状況に陥ってしまうからです。
できるだけたくさんのインプットをしてあげることで、多様な自己表現ができるようになるでしょう。
②アクティビティを取り入れやすい
非認知能力には、友達や家族など日々の生活の中で学べるものがたくさんあります。その中で、新しい物事に触れる機会も多いことでしょう。
非認知能力はのびしろが大きいもの。子ども自身が「やりたい」「やってみたい」など興味関心を持ったものは、挑戦させてあげることが大切です。
また、非認知能力は、遊びだけでなく習い事でも伸ばしやすいといわれていますので、吸収力が高い幼少期こそが絶好のチャンス!
ていねいに育む日々を積み重ねることで、子供の将来や人生が豊かになることでしょう。
非認知能力は習い事でも育つ
非認知能力と習い事は密接な関係にあります。特に吸収力が高い幼少期は、子どもの「心の力」のベースになる学びは必要不可欠といっても過言ではありません。
ですが、低年齢の子ども自身の強みや特性を見極めるのは、なかなか難しいものです。そこで今回は、子どもに合った非認知能力を高める習い事の選び方と、見つける方法をご紹介していきます。
非認知能力を高める習い事の選び方
子どもに合った非認知能力を高める習い事を選ぶポイントは3つ!
・集団の習い事
・長く続けられる
・特性に合っているか
非認知能力を鍛えるには集団の習い事が適しているといわれています。それは周囲との関わり方を学べ、コミュニケーション能力が育つからです。
また、「長く続ける」ということも大切なポイント!「失敗は成功のもと」というように、失敗から学ぶことはたくさんあります。
この機会に、続けることの大切さも学ばせましょう。そして、意欲を持って挑戦できるものがベスト。
まずは、「子どもが興味関心を示すかどうか」を大切に、子どもにあった習い事を決めていきましょう。興味のないことを習わせてもモチベーションが下がるばかりで伸びるものも伸びません。
非認知能力を高める習い事を見つける方法
今回は、子どもに合った非認知能力を高める習い事を見つける方法として、ハーバード大学教授、ハワード・ガードナー博士の「多重知能理論」をご紹介します。
ガードナー博士の考え方は、人間には「IQ」や「EQ」という単一の知能ではなく、「8つの知能」が備わっているというもの。まり、どのような人にも、何かしらの優れた知能(長所)が備わっているはずということです。
気になる「IQ以外の8つ知能」は以下のように提唱されています。
能力 | 特徴 |
---|---|
言語・語学知能 | 話し言葉・書き言葉への理解力や感受性が高い |
倫理・数学的知能 | 理論的思考、規則性・予測が得意 |
視覚・空間知能 | 絵画が得意、視覚的・空間的なクリエイティビティがある |
身体・運動知能 | 運動能力が高い、身体を自由にコントロールできる |
音感・リズム知能 | リズム感・音感が優れている、音楽への感受性が高い |
人間関係形成知能 | 人との関わり合いが好き、グループワークが得意 |
自己観察・内省知能 | 自立心・決断力がある、独自のやり方を見出す |
博物学知能 | 環境・自然・動物に関心が高い、アウトドアが好き |
それでは、上記を参考に習い事をご紹介していきます。
非認知能力を育てる習い事8選
子どもの才能を大きく伸ばすには、子どもの長所を見極め、知能にあった勉強方法や習い事をすることが大切と言われています。
以下に、ガードナー博士の「IQ以外の8つの知能」を参考に習い事をまとめました。
①演劇
演劇は、表現力を育む上でオススメの習い事です。演技を学ぶことで、表現する楽しさや「もっとこうしたい」というような意欲が芽生えてきます。
また、台本を読むことで言葉を使った表現力を身につけることもできます。演劇を学ぶ人の世代はさまざま。そのため、自分をアピールしたり違う世代と会話をする機会が増え、コミュニケーション能力も養われます。
さらに、演技をすることで自分の殻を破ることができ、自信をつける良いチャンスとなるでしょう。
②プログラミング
2020年度より小学校の授業でも必須となったプログラミング。その目的は、物事を整理し、論理的に考える力や行動力の育成です。
プログラミング学習では、失敗を繰り返し続けることが前提なので、失敗を恐れず挑戦していく力が身につきます。
また、失敗の連続を修正していく過程で、自然と最後まで諦めない、やり抜く力も養われます。さらに、スケールの大きい課題に取り組む際は、仲間の協力が必要なため、協調性も身につく最強の習い事です。
③絵画造形教室
絵画や工作は、一つの作品を作るのに時間がかかるため、フロー状態(時間が経つのを忘れるほど作業に没頭している状態)に入ることができます。
幼少期よりフロー状態をたくさん経験しておくと、集中力のスイッチの切り替えが上手になり、物事に没頭できるようになります。
また、自分の頭の中のものを表現することから、豊かな感性が身につきます。さらに、脳内のイメージをアウトプットする作業をしていることから、物事を客観視する力も期待できるでしょう。
④総合スポーツ
総合スポーツとは、1つの特定の競技に絞り込むのではなく、さまざまな競技を体験させるということです。スポーツでは、チームメイトとのコミュニケーション・協調性はマスト!
また、ポジションが決まっていることから、自分の役割を理解することができますし、試合で負けたときなど、その原因を追求・改善するための方法を考える力も養われます。
さらに、チームメイトがいることから、お互い支え合い最後まで諦めずにやり抜く力も自然と身につくでしょう。
⑤楽器・リトミック
楽器を習うことの最大のメリットは、指先を動かすことです。それは、非認知能力と密接に関係している前頭前野を鍛えるのに最適だからです。
音楽はスポーツのようにスコアが出るわけではありません。どこまで練習するかという判断など、困難を乗り越える力が身につきます。
また、リトミックとは音楽のリズムに合わせて体を動かし表現する習い事。表現力はもちろん、想像力や記憶力、集中力など多岐に渡って養われるので、人間的にも成長できるでしょう。
⑥水泳・体操
水泳といえば個人競技!と思われがちですが、多くのスイミングスクールが集団指導です。集団で同じ練習をする、わがままを言わずに練習をすることから集団行動や協調性、社会性が身につきます。
また、一緒に練習している友達よりも上手になりたい、といった競争心も芽生えることでしょう。
とはいえ、進級テストなど個々のペースに合わせて進めていくため、自分自身の目標を明確にし、合格するまでやり抜く力も育まれるなど、人気No.1の習い事です。
⑦ボーイスカウト
ボーイスカウトは、団や隊によって活動は異なりますが、基本的には野外での外遊びを中心とした活動をしています。どの活動もチームで行います。
ロープの使い方、手旗信号などのスキルを習得するごとに、級が上がっていくので、隊員のやる気や達成感を引き出してくれます。
ルールはもちろん、リーダーシップや協調性、さまざまな成功・失敗体験を積み重ねることができるのも魅力のひとつ。自然とのふれあいの中、生きる力を育んでいくのが最大の特徴です。
⑧自然学習
キャンプや山歩き、虫取り、川あそび、など自然とふれあう野外活動がアウトドア。自然の中で植物や生物、土や水、虫や魚などにふれることで、生物の生態や命の大切さを知ることができます。
また、新しい遊びを考えたり、見たことのない植物を発見することにより、創造力や発想力が養われます。
最大のメリットは、豊かな自然とふれあうことで磨かれる感性!これは都会生活や机上では磨かれません。五感を養い、心身ともに健やかな発達を促させるのがアウトドアの魅力です。
非認能力は数値化できつつある
数値化できる認知能力とは違い、目に見えない・数値化しにくい非認知能力。これまで、数値化することは難しいといわれてきましたが、注目度が年々高まることもあり、数値化するための試行錯誤が重ねられています。
教育テスト研究センター*によると、非認知的能力を計測するゲーム「お神輿担ぎゲーム」の開発により、非認知的能力を測定できる可能性が存在すると発表されました。
非認知能力の数値が見える化されると、個々によって必要な部分に特化した習い事ができ、できる限り伸ばしてあげることも可能かもしれません。
また、最近では習い事の現場でも、数値化の取り組みが始まっているところもあるようですので、ますます期待が高まりますね。
※参考:教育テスト研究センター
まとめ
「生きる力」ともいわれる非認知能力。この能力は、たくさんの経験と日々の積み重ねによって身についていきます。変化の激しい時代を生き抜くために、幼少期より非認知能力を育てることは何よりの財産です。
子どもがやりたいものを見つけた時がチャンス!この時、非認知能力はどんどん伸びていきますよ。
そのような経験を繰り返し、少しづつ蓄えられた能力は、必ずや「生きる力」となり生涯にわたって幸せな生活を送ることができるでしょう。
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